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Kim, Tertilt, & Yum (2024, AER)
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daimoriwaki authored Jun 16, 2024
2 parents 6750e22 + 34f2e29 commit 2af953a
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84 changes: 84 additions & 0 deletions docs/document_135.md
Original file line number Diff line number Diff line change
@@ -0,0 +1,84 @@
---
id: "135"
title: "教育支出の増加と韓国の低出生率"
description: "教育への支出の増加が韓国の出生率に与える影響"
date: "2024-06-02"
category: "fertility"
categoryLabel: "少子化対策"
tables: [
{
"title": "低所得者層の教育支出の低下",
"effectiveness": "効果あり",
"strength": 4
},
{
"title": "出生率の低下",
"effectiveness": "効果あり",
"strength": 0
},
]

points:
- 高所得者層が自身の子供の教育費を増加させると、低所得者層の家庭も教育費を増加させる。
- 高所得者層における教育投資の増加は、子供を持つことのコストを高め、出生率を低下させる。
- 出生時の給付金や教育支出に対する課税は出生率を上昇させるが、教育支出を削減するため、人的資本の損失を伴う。

contacts:
- 梅谷隼人(神戸大学)

---

## 背景
- 韓国は世界で最も出生率が低い国の一つであり、特に教育費の高さがその一因とされている。
- 多くの家庭が子供の教育に多額の費用を費やしており、家計の9.2%を占めている。
- こうした教育投資の過激な増加は、出生率の低下につながっている可能性がある。

## 介入
- 教育支出の増加

## 評価指標
- 低所得者層の教育支出
- 出生率

## 分析方法
- 一つ目の分析では、高所得者層の教育支出が低所得者層の教育支出に与える影響を分析する。
- ここでは、深夜の外出禁止令を操作変数として使用している。
- 外出禁止令は高所得者層の子供が通う塾のみに影響を与え、低所得者層の教育支出には影響を与えない。
- 二つ目に、教育支出と出生率の関係に関する理論モデルを提案している。
- ここでは他人の子供よりも自身の子供を相対的に優遇するということを考慮した世代重複モデルを用いている。
- KLIPSのサンプルを使用してカリブレーションを行っている。
- 他人の子供よりも自身の子供を優遇した場合とそうでない場合を想定したパラメータを設定し、出生率の変化を推定している。

## 証拠の強さ
- SMS:4 (教育支出)
- 根拠
- 1段階目のF統計量が十分大きいため、弱い操作変数の問題はない。
- 外出禁止令の実施前では、実施された地域とされていない地域の教育支出に差はなく、事前トレンドのテストは通っている。
- SMS:0 (出生率)
- 根拠
- 理論モデルに基づきカリブレーションによって不明なパラメータを推定し、その推定されたパラメータをもとに政策効果をシミュレーションで計算した。
- カリブレーションでは一つ目の分析結果や韓国の労働所得パネル調査(KLIPS)等を利用しパラメータを取得している。
- 得られたパラメータをモデルに当てはめ、実際の出生率や教育支出をうまく説明できることを確認している。

## サンプル
- 対象は1970-1975年に生まれた女性。
- 調査対象地域は韓国の全地域。
- データソース: KLIPS、生活時間調査(Korean Time Use Survey)

## 結果
- 上位15%の高所得者層の所得あたり教育支出を10%増加させると、下位50%の低所得者層は所得あたりの教育支出を約0.5%ポイント増加させる。
- 高所得者層の教育投資が低所得者層の教育支出に影響を与えないという仮想的な状況を考えると、教育支出が減少し、子供を持つ割合が上昇する。
- この効果は下位25%の所得層で最も大きく、教育支出は約9%減少し、子供を持つ割合は約5%増加する。
- 出産時の給付金が100%増加すると、教育支出は所得あたり10.4%から9.9%に減少し、出生率は4.1%増加する。
- 教育支出に対する課税が100%増加すると、教育支出は所得あたり8.9%から7.4%に減少し、出生率は2%増加する。
- 出産時の給付金や教育支出に対する課税は教育支出を減少させ、将来世代の人的資本の損失を伴う。
- 上記のトレードオフのもとで厚生を最大化する政策として、教育支出に対する22%の課税と月額61ドルの給付金を18年間行うことで、出生率は10.8%増加し、教育支出は39%減少する。

## 研究の弱点
- モデルは韓国に基づいており、他の国に直接適用する際には追加の調整が必要。
- 例えば、韓国は相続税が高いため、教育投資が他の国よりも多い可能性があり、その影響を考慮する必要がある。
- 厚生を最大化する政策は第一世代のみを考慮しており、将来の世代にとって最適な政策は異なる可能性がある。
- 大学進学枠の不足が背景にある可能性があるが、この点は実証されていない。

## 書誌情報
- Kim, S., Tertilt, M., & Yum, M. (2024). Status Externalities in Education and Low Birth Rates in Korea. The American Economic Review, 114(6), 1576–1611. https://doi.org/10.1257/aer.20220583
83 changes: 83 additions & 0 deletions docs/document_new.md
Original file line number Diff line number Diff line change
@@ -0,0 +1,83 @@
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title: "教育支出の増加と韓国の低出生率"
description: "教育への支出の増加が韓国の出生率に与える影響"
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category: "fertility"
categoryLabel: "少子化対策"
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"title": "低所得者層の教育支出の低下",
"effectiveness": "効果あり",
"strength": 4
},
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"title": "出生率の低下",
"effectiveness": "効果あり",
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},
]

points:
- 高所得者層が自身の子供の教育費を増加させると、低所得者層の家庭も教育費を増加させる。
- 高所得者層における教育投資の増加は、子供を持つことのコストを高め、出生率を低下させる。
- 出生時の給付金や教育支出に対する課税は出生率を上昇させるが、教育支出を削減するため、人的資本の損失を伴う。

contacts:
- 梅谷隼人(神戸大学)

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## 背景
- 韓国は世界で最も出生率が低い国の一つであり、特に教育費の高さがその一因とされている。
- 多くの家庭が子供の教育に多額の費用を費やしており、家計の9.2%を占めている。
- こうした教育投資の過激な増加は、出生率の低下につながっている可能性がある。

## 介入
- 教育支出の増加

## 評価指標
- 低所得者層の教育支出
- 出生率

## 分析方法
- 一つ目の分析では、高所得者層の教育支出が低所得者層の教育支出に与える影響を分析する。
- ここでは、深夜の外出禁止令を操作変数として使用している。
- 外出禁止令は高所得者層の子供が通う塾のみに影響を与え、低所得者層の教育支出には影響を与えない。
- 二つ目に、教育支出と出生率の関係に関する理論モデルを提案している。
- ここでは他人の子供よりも自身の子供を相対的に優遇するということを考慮した世代重複モデルを用いている。
- KLIPSのサンプルを使用してカリブレーションを行っている。
- 他人の子供よりも自身の子供を優遇した場合とそうでない場合を想定したパラメータを設定し、出生率の変化を推定している。

## 証拠の強さ
- SMS:4 (教育支出)
- 根拠
- 1段階目のF統計量が十分大きいため、弱い操作変数の問題はない。
- 外出禁止令の実施前では、実施された地域とされていない地域の教育支出に差はなく、事前トレンドのテストは通っている。
- SMS:0 (出生率)
- 根拠
- 理論モデルに基づきカリブレーションによって不明なパラメータを推定し、その推定されたパラメータをもとに政策効果をシミュレーションで計算した。
- カリブレーションでは一つ目の分析結果や韓国の労働所得パネル調査(KLIPS)等を利用しパラメータを取得している。
- 得られたパラメータをモデルに当てはめ、実際の出生率や教育支出をうまく説明できることを確認している。

## サンプル
- 対象は1970-1975年に生まれた女性。
- 調査対象地域は韓国の全地域。
- データソース: KLIPS、生活時間調査(Korean Time Use Survey)

## 結果
- 上位15%の高所得者層の所得あたり教育支出を10%増加させると、下位50%の低所得者層は所得あたりの教育支出を約0.5%ポイント増加させる。
- 高所得者層の教育投資が低所得者層の教育支出に影響を与えないという仮想的な状況を考えると、教育支出が減少し、子供を持つ割合が上昇する。
- この効果は下位25%の所得層で最も大きく、教育支出は約9%減少し、子供を持つ割合は約5%増加する。
- 出産時の給付金が100%増加すると、教育支出は所得あたり10.4%から9.9%に減少し、出生率は4.1%増加する。
- 教育支出に対する課税が100%増加すると、教育支出は所得あたり8.9%から7.4%に減少し、出生率は2%増加する。
- 出産時の給付金や教育支出に対する課税は教育支出を減少させ、将来世代の人的資本の損失を伴う。
- 上記のトレードオフのもとで厚生を最大化する政策として、教育支出に対する22%の課税と月額61ドルの給付金を18年間行うことで、出生率は10.8%増加し、教育支出は39%減少する。

## 研究の弱点
- モデルは韓国に基づいており、他の国に直接適用する際には追加の調整が必要。
- 例えば、韓国は相続税が高いため、教育投資が他の国よりも多い可能性があり、その影響を考慮する必要がある。
- 厚生を最大化する政策は第一世代のみを考慮しており、将来の世代にとって最適な政策は異なる可能性がある。
- 大学進学枠の不足が背景にある可能性があるが、この点は実証されていない。

## 書誌情報
- Kim, S., Tertilt, M., & Yum, M. (2024). Status Externalities in Education and Low Birth Rates in Korea. The American Economic Review, 114(6), 1576–1611. https://doi.org/10.1257/aer.20220583

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