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Merge pull request #156 from sishii0418/feat/cohen_etal_2013
143をマージします。
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Original file line number | Diff line number | Diff line change |
---|---|---|
@@ -0,0 +1,67 @@ | ||
--- | ||
id: "143" | ||
title: "子供手当の支給" | ||
description: "イスラエルにおいて子供手当の支給が出産意欲に与えた影響" | ||
date: "2024-05-31" | ||
category: "fertility" | ||
categoryLabel: "少子化対策" | ||
tables: [ | ||
{ | ||
"title": "妊娠確率", | ||
"effectiveness": "効果あり", | ||
"strength": 4 | ||
}, | ||
] | ||
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points: | ||
- 150シェケル (およそ34米ドル) 相当分の子供手当の上昇は妊娠確率0.99ポイント上昇に結びついていると推計された。 | ||
- 子供手当の支給と妊娠確率との正の関係性は、すべての収入層と、ユダヤ教超正統派を除くすべての宗教グループで確認された。 | ||
- 世帯収入が貧困ライン以下の世帯では収入が増えるにつれ妊娠確率は下がり、収入が中程度以上の世帯では上がる傾向にあった。ただし妊娠確率への世帯収入の影響は、子供手当の影響よりも小さかった。 | ||
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contacts: | ||
- 石井俊輔 (The University of Edinburgh) | ||
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## 背景 | ||
- 理論的には、収入が妊娠確率にもたらす影響は小さく、またその影響の方向は収入が低い世帯で負、収入が高い世帯で正であるとされる。 | ||
- イスラエルでは子供を持つすべての母親に子供手当が支給され、その支給額の合計は1999~2004年のイスラエルのGDPの0.8~1.5%に相当した。 | ||
- 1999年~2004年にかけて、ハルパート法やいわゆるネタニヤフ改革によりイスラエルの子供手当の支給額に大きな変化があった。 | ||
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## 介入 | ||
- 1999~2004年にかけて観察された、子供手当支給額の変動。 | ||
- 具体的には、2003年以前は、3人目の子供に対しては1, 2人目に対する子供手当支給額の約2倍、4人目以降の子供には約4倍の手当が支給されていた。 | ||
- 2001年~2003年までは、ハルパート法により5人目以降の子供に対する手当支給額が増額され、1, 2人目と比べて約5倍の額が支給されていた。 | ||
- 2003年のネタニヤフ改革により、2003年以降に生まれた子に関しては、3人目以降であっても1, 2人目と同じ額が支給されるようになり、結果として3人目以降の支給額は以前より減少した。 | ||
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## 評価指標 | ||
- 妊娠する確率 | ||
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## 分析方法 | ||
- 政策変更により子供手当の支給額が変動したことを用いて、子供手当の支給による出生率への影響を分析した。 | ||
- 母親の固定効果や子供の数、年齢、教育レベルや宗教をコントロール変数として用いた。 | ||
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## 証拠の強さ | ||
- SMS: 4 | ||
- 子供手当改革に対する女性の期待形成の仕方によってはモデルが適切に因果関係を識別できていない可能性がある。それに対して、さらに3つの期待形成モデルで検証することで、もともとのモデルが適切であったことを確認している。 | ||
- 母親固定効果をコントロールしても、推定結果が変わらないことを確認している。 | ||
- 夫の収入を操作変数に用いてモデルの頑健性を確認することで、世帯収入と出生率の変化が偶発的ではないことを確認している。 | ||
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## サンプル | ||
- 対象はイスラエルに居住し、既婚でかつ子供を2人以上もつ45歳未満の女性。 | ||
- 条件に適合するイスラエルの全女性の中からおよそ40%を無作為抽出し、サンプルサイズは約30万人。 | ||
- 対象期間は1999~2005年。 | ||
- データはイスラエル中央統計局から提供された複数の非公開データセットを結合したもの。 | ||
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## 結果 | ||
- 子供手当の支給額と妊娠確率の間には正で有意な関係が確認された。推定値から、150シェケル (およそ34米ドル、平均世帯収入の約2%に相当) の子供手当の上昇は妊娠確率0.99ポイント上昇に結びついていると推計された (もともとの妊娠確率は10.3%)。 | ||
- 世帯収入や宗教ごとの分析でも、ユダヤ教超正統派を除くすべての収入・宗教グループで有意に正の関係がみられた。 | ||
- ユダヤ教世俗派と正統派では収入が高くなるにつれて子供手当支給と妊娠確率との関係の大きさは小さくなっていった。一方でムスリムのグループでは収入の程度にかかわらず強い関係性があった。 | ||
- 世帯収入が貧困ライン以下の世帯では収入が増えるにつれ妊娠確率が下がる傾向にあった一方で、収入が中程度以上の世帯では妊娠確率が上がる傾向があった。ただし妊娠確率と世帯収入との関係性は、妊娠確率と子供手当との関係性よりも弱かった。 | ||
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## 研究の弱点 | ||
- 3人目以降の子供の出生に対する支給額について分析しているため、1人目や2人目の子供の出生に対する影響は分からない。 | ||
- 子供手当支給額が変更されてからまだ長い時間が経っておらず、またネタニヤフ改革後2年分のデータでしか検証していないため、長期的な影響は観測できていない。 | ||
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## 書誌情報 | ||
- Cohen, A., Dehejia, R., & Romanov, D. (2013). Financial incentives and fertility. *Review of Economics and Statistics*, 95(1), 1-20. https://doi.org/10.1162/REST_a_00342 |